「この世界の片隅に」の作者こうの史代が大切にしている言葉
2018/11/04
☆アニメ映画『この世界の片隅に』声優でカムバックしたのん(能年玲奈)
事務所独立問題で今後の動向が心配されていた能年玲奈さんですが、のんに改名してからの仕事としてアニメ映画『この世界の片隅に』の主人公であるすず役の声を担当することでカムバックしました。
この映画の監督を務める片渕須直氏からオファーを受けたそうです。
本人もアニメ映画の吹込みは初めてだそうですが、とても嬉しそうにしていたのでこちらもほっとしました。
天然キャラとも言われていたのんさんですが、この映画の主人公も純粋な心の持ち主でのんびりした性格や気取らずに毎日の生活に愚直に生きている姿は、のんさんに合っているように思います。
片渕監督も、このキャラに合う声はのんさんしかいないと思ったそうです。
NHKの朝ドラあまちゃんで見せた演技を、今度は声を通してアニメのキャラで復活することを期待したいと思います。
☆こうの史代が普通の日常を克明に描く原点は?
この映画の原作者は、こうの史代さんという方で、広島県広島市のご出身です。
広島大学の理学部を中退されてこの世界に入ったようです。
漫画家、イラストレータとして1995年の『街角花だより』でデビューされたそうです。
代表作として、原爆被災地広島を描いた『夕凧の街 桜の園』があります。
また東日本大震災プロジェクトの歌である『花は咲く』のアニメキャラクター原案も手掛けています。
絵描きの才能って生まれつきですよね。
私は簡単なスケッチくらいは描けますが、複雑な人物描写になるともう駄目です。
私の父は趣味で絵を描いていましたが、特に本格的に絵を習ったわけではないのに、いろんな絵画展にも出品してたので、いつも私が評論家になって出品する絵を選んでいました。絵は上手に描けなくても評論だけはそれなりにできてました。
そもそも絵を描くのが好きでないと続きませんね。
私の父は画家にはなりませんでしたが、こうの史代さんは理学部を中退するくらいですから、小さいころから好きでしょうがなったのだと思います。
さて、こうの史代さんが描く世界は、とても身近な日常を描くことで、見る人の心にじわーっと感動を送り込んでくるようです。
こうの史代さんが大事にしているアンドレ・ジイドの言葉があるそうです。
『私は常に真の栄誉を隠し持つ人間を書きたいと思っている。』
普通の人間が普通に毎日のやるべきことをやって生きていく。
その中に普通の幸せがある。
けれどもその普通の幸せを突然奪う出来事が、われわれを襲ってくることがある。
それでも人間は生きていかねばならない。
人生や世の中を大上段に構えないで、普通の暮らしを克明に描くことで、何が本当に必要なことなのかを問いかけているような気がします。
☆クラウドファンディングで作成されたアニメ映画『この世界の片隅に』
この映画は、クラウドファンディングで目標2000万円を超える3622万円余りの資金が集まったそうです。
片渕監督の意気込みも感じることが出来、この映画に期待したいと思います。
『この世界の片隅に』や『夕凧の街 桜の園』など一般庶民の心を揺さぶる作品は、こうの史代さんが広島で生まれ育ったということも背景としてあると思います。
普通の日常が一瞬で消えていったという信じられない出来事は、いつまで経っても忘れられないでしょう。
当事者だけでなく、その子供や孫にも静かに伝えられているのだと思います。
先日のオバマ大統領の広島訪問でも、原爆被害者の方々と向き合う姿は感動的でした。
広島市民の方々も静かに受け入れていたことは、大人の態度で素晴らしいと思いました。
悲惨な出来事に会っても、毎日を生きていかねばなりません。
そういう声なき声の普通の人間が、やるべきことを毎日黙々とこなしながら、この社会は成り立っているのだと思います。